子どもたちは、日々たくさんのことを感じ、考えています。
しかし、その気持ちや本音を素直に話せるかどうかは、「話し手である子ども」だけでなく、「聞き手である先生」の姿勢に大きく左右されます。
教える力やリーダーシップはもちろん大切ですが、それ以上に重要なのが「傾聴力」。
子どもが「この先生になら話してみよう」と思えるかどうかは、先生の“聞き方”にかかっているのです。
この記事では、子どもが安心して心を開く先生の共通点と、日々の教育現場で活かせる「傾聴のコツ」を紹介します。
なぜ先生に傾聴力が求められるのか
学校は、子どもにとって生活の大部分を占める場所です。
友人関係、勉強、家庭環境――多くのことを抱えながら、心の中には言葉にしきれない感情がたくさんあります。
その気持ちを安心して話せる相手が「先生」であれば、子どもは孤立せず、自分をうまく表現できるようになっていきます。
一方で、話を聞いてもらえない、受け止めてもらえないと感じると、心を閉ざし、問題が表に出にくくなることも少なくありません。
だからこそ先生には、知識を伝える以上に「子どもの心を受け止める力=傾聴力」が求められるのです。
子どもが安心して話し出す先生の「聞き方」の特徴
1. 話を途中でさえぎらず、最後まで聞いてくれる
子どもは大人に比べて話すスピードが遅かったり、話がまとまっていなかったりします。
それでも、焦らず最後まで聞いてもらえることで「ちゃんと受け止めてもらえた」という安心感が生まれます。
途中でまとめたり、先回りしてしまうと、子どもは「もういいや」「どうせ聞いてもらえない」と心を閉ざしてしまうことがあります。
話をさえぎらない姿勢こそ、信頼の第一歩です。
2. 子どもの気持ちを否定せず、まず受け止める
「そんなこと気にするな」「それはダメでしょ」といった否定的な反応は、子どもの心を一瞬で閉ざしてしまいます。
たとえ大人から見れば些細なことでも、子どもにとっては大きな出来事です。
まずは「そう感じたんだね」「それはつらかったね」と気持ちを受け止めることが大切です。
理解しようとする姿勢が伝われば、子どもは安心してさらに本音を話せるようになります。
3. 表情・うなずき・相づちで「ちゃんと聞いている」を伝える
子どもは先生の表情や態度をよく見ています。
どんなに話を聞いているつもりでも、無表情で腕を組んで聞いていれば「怒っているのかな?」「早く終わってほしいのかな?」と不安になります。
うなずきややわらかい表情、「うん、うん」といった相づちは、子どもにとって安心のサイン。
「先生がちゃんと聞いてくれている」という実感が信頼関係を育てます。
4. 話の内容だけでなく、背景や感情を聞き取ろうとしている
子どもが話す内容は、ときに表面的だったり、断片的だったりします。
聴く力のある先生は、言葉の裏にある「背景」や「感情」に耳を傾けます。
「そのとき、どんな気持ちだったの?」「どうしてそう思ったのかな?」と優しく問いかけることで、子ども自身も自分の気持ちに気づきやすくなります。
こうした対話は、子どもの内省力や自己表現力を育てるきっかけにもなります。
5. 忙しい中でも“聴く時間”をつくる工夫をしている
先生の毎日はとても忙しく、1人ひとりの話をじっくり聞く時間を取るのは簡単ではありません。
それでも、信頼される先生は、短い時間でも「きちんと向き合う時間」を大切にしています。
朝のちょっとした会話や放課後の数分など、「この時間はあなたの話をちゃんと聞いているよ」という姿勢を示すことが、子どもの安心感を生みます。
傾聴力がある先生が生み出す教室の空気
傾聴力のある先生がいる教室には、次のような良い循環が生まれます。
- 子どもが安心して話せる空気ができる
- 小さな悩みやトラブルが早い段階で共有される
- 先生と子どもの信頼関係が深まり、指導がスムーズになる
- 子ども同士のコミュニケーションにも良い影響が広がる
話を「聞いてもらえる」教室は、子どもにとって居心地のいい場所になります。
安心感があるからこそ、学びへの意欲や人間関係も自然と育っていくのです。
まとめ|「聞く力」は先生の大切な教育力
- 子どもが安心して話し出せるかどうかは、先生の「聞き方」にかかっている
- 話をさえぎらない、否定しない、表情や態度で受け止める姿勢が信頼の土台
- 短い時間でも丁寧に聞くことで、子どもは心を開くようになる
教える力や知識だけでは、子どもの本音は引き出せません。
「聞く力」こそが、先生にとって最も重要な教育力のひとつです。
子どもたちの小さな声を受け止める先生がいることで、教室は安心と信頼に満ちた場へと変わっていきます。
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